5.2015 年~ 再強硬路線
本省通達による再収容増加・収容長期化
2015年以降、入管は2010年から先送りしていた「送還忌避者」問題を、すでに破綻したことが明らかなやり方で「解決」しようとします。再収容・長期収容を手段として強硬に送還を進めることで「送還忌避者」数を減らしていこうという路線です。
2015年から16年にかけて法務省入国管理局長が出した3つの通達・通知が決定的に重要です。
(1)2015年9月18日「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について(通達)」
(2)2016年4月7日「安全・安心な社会の実現のための取組について(通知)」
(3)2016年9月28日「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る運用と動静監視の徹底について(通知)」
(1)の通達は、仮放免許可の厳格化と仮放免者の再収容強化を指示したものです。この通達は先にふれた 2010 年通達(収容期間が長期化する被収容者について柔軟に仮放免を活用するよう指示したもの)は廃止するとの内容もふくんでいます。
(2)では、「送還忌避者の発生を抑制する適切な処遇」について「様々な工夫や新たな手法を取り入れるなど」して取り組みなさいとの指示がなされてます。報道されている入管施設の処遇の実例などを見て、「入管職員は被収容者にわざと嫌がらせをしているのではな いか」と感じる人も多いのではないでしょうか。実際、入管は意図的・計画的に嫌がらせをしているのだということが、この通知文書で裏付けられていると言えます。被収容者が送還を拒否しようなどという考えを起こさないように処遇を「工夫」し、日本から叩き出せと、そういう指示を入管局長が 2016 年に出しているわけです。収容をたえがたいものにして在留の意思をくじけと、いわば拷問による出国強要を公然と指示しているおどろくべき通知です。
(3)は、(1)の指示を徹底せよという指示をあらためて出したものです。 この3つの通達の出された 2015,6 年以降、仮放免者の再収容が激増し、収容の長期化も先例がないほどひどくなりました。在特の基準も、2013,4年ごろと比べても 15, 16 年とますます厳しくなりました 。
さらに、法務省入国管理局長は 2018 年 2 月 28 日には「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について(指示)」を出します。 これはその名の通り(1)の通達の「更なる徹底」を指示したもので、「仮放免を許可することが適当とは認められない者は, 送還の見込みが立たない者であっても収容にたえがたい傷病者でない限り, 原則, 送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める」としてい ます。
同じ年の 8 月 24 日には、法務省入国管理局警備課長から「送還忌避者縮減のための重要業績評価指標の作成について」という通知が出ます。これは、本省が「送還忌避者」を縮減するための「縮減目標」を設定するので、各収容施設は毎月の「縮減目標値」を設定しこれにむけて業務遂行せよ、達成できなかった場合はその原因を分析の上、目標値が達成できるように業務の見直し等を行えと指示したものです。
この 2018 年に本省から出された2つの指示・通知には、「送還忌避者」それぞれの事情・状況にかかわらず、すべての「送還忌避者」の収容を継続し送還を遂行せよという、本省のきわめて強硬な姿勢があらわれています。
次回:「再強硬路線がまねいた人権侵害事件」、「2つの見殺し事件」、「コロナ禍と仮放免者増大」
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