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名古屋地検の不起訴処分に対する抗議声明文

名古屋地検の不起訴処分に対する抗議声明文

2023年10月22日
入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合
代表 指宿 昭一
 

 2023年9月29日、名古屋地方検察庁は、名古屋出入国在留管理局内で2021年に亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの刑事告訴について、改めて「嫌疑なし」として「不起訴処分」としたことをご遺族代理人へ通知した。職員13人の不起訴は不当という名古屋第1検察審査会の議決を受けて再び検察が捜査していたものである。紙切れ一枚の、何の理由も説明もない通知であった。
 おととし3月、名古屋入管の施設で収容中の、当時33歳のスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんが死亡し、遺族らが職員13人を殺人罪などで告訴。名古屋地検は、去年6月、「死因などが具体的に特定できなかった」として、13人全員を不起訴処分としていた。この決定に対し、検察審査会は去年12月、「不起訴は不当」と議決。名古屋地検は再度、捜査を行っていたが、再び不起訴処分(嫌疑なし)とした。
これによって、事実上の捜査終結となった。

 名古屋入管に収容されていたウィシュマさんは、21年1月ごろから体調が急変し、嘔吐を繰り返していた。2月5日には、外部病院で内視鏡検査を受けた結果、胃の状態については「重篤な状態ではない」との医師の診断を受けたが、その後も入管は「問題ない」との態度を取り続けた。しかし、その検査の時に、診察した医師から、点滴を打つ話があったにもかかわらず、医師から「時間がかかる」と言われ、名古屋入管は「入院と同じような状態になる」(当時、名古屋入管職員が支援者に行なった説明)との理由で、ウィシュマさんに点滴を打つことなく収容場に連れ帰ってしまった。以降、本人からも、今まで以上に明確に「点滴をやってほしい」「病院に行きたい」と何度も要望が出されていた。支援者らも、ウィシュマさんを入院させ、点滴を打つこと、それができないなら即刻仮放免させるよう、機会あるごとに申し入れてきたが、入管は、一貫としてその要求を受け入れなかった。
 胃が「重篤な状態ではない」といえども、嘔吐を繰り返し、薬さえ飲めない状態にあったのであり、その原因はどこにあったのか。栄養も水分も十分に摂取できていない状態のウィシュマさんを救済するためには、点滴は不可欠だったはずである。2月15日の尿検査では、「ケトン体3+」という数値が出ていたことが「調査報告書」からあきらかになっている。「飢餓状態」を示すとされる数値である。しかし、以後、亡くなるまでのおよそ20日間にわたり、3月4日の精神科受診をのぞき外部の病院の受診を一度もさせず、入院はおろか点滴治療を受けさせず、名古屋入管はこの数値を改善させるための治療をなんら受けさせずに放置した。
亡くなる直前までの経過を見ても、ウィシュマさんは、亡くなる前日3月5日には脱力した状態が多くなり、亡くなる当日の3月6日朝の点呼時から反応・応答が弱かった。そして、午後2時7分頃,呼掛けに無応答,脈拍確認できず。午後2時15分頃,救急搬送要請され、午後3時25分頃,搬送先病院で死亡が確認された。
 入管が発表した報告書では、ウィシュマさんの死因について、医師らの見解として「脱水状態」、「栄養状態が悪い」ことなどを記載している。人を収容する入管には収容主体としての高度な責任があるはずだが、これらの死因を引き起こした入管の対応では、入管がその責任を果たしたとは到底言えない。
ましてや、名古屋入管は一連の対応において、ウィシュマさんが仮放免を目的にした詐病であるという疑いを持っていたが、そもそもこのような予断と偏見によって、結果被収容者が死亡したことについて、入管に問われる責任は非常に重く、相応の罪が問われるべきである。

 今回の刑事告訴の捜査の一連の過程では、これらのことが追及されないままで、人間の命や人権よりも国家権力の面子を守ることが優先されている権力構造の現実が露呈した。まさに、名古屋地検の不起訴処分は、国家権力の横暴であり、入管行政と検察が癒着した権力構造のなかで、問題が不透明なままで、国家権力側に傾いた結論ありきの処分である。国家権力によって身体の自由を奪われ、最後は命さえも奪われたにもかかわらず、入管職員が誰一人として刑事責任を取ることなく終結した不起訴処分は、国家権力の横暴と言わずしてなんと言うのか。
 日本の帝国主義国家の歴史をたどれば、戦前から朝鮮人、中国人、国内の少数民族に対する差別は絶えることなく続いている。ましてや戦後入管体制と入管行政においては、他民族に対する差別はしごく当然のものとして権力構造に引き継がれている。入管も、検察も、スリランカ人であるウィシュマさんの人命を軽視し、日本の帝国主義国家権力にとって不都合な真相は追及せず、不透明な結末を残し、結論ありきで議決し、不起訴処分を下したのである。
 我々は、このような国家権力と検察の不条理に心から憤怒する。日本国憲法で人権擁護、民主主義、人間の尊厳を守るなどと謳ったところで、偽善で体裁を繕ったにすぎない。このような悲惨な犠牲と民族差別は決して忘れてはならず、二度と繰り返させてはならない。我々は、現在も続いている民事裁判や、第三者機関等への要請等を通じて、ご遺族と共に最後まで真相究明と再発防止のために徹底して闘い抜く。

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