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11.23ウィシュマさん死亡事件裁判報告・交流集会 報告①

更新日:2023年1月23日

 今後のウィシュマさん死亡事件の真相究明に向け、ウィシュマさんのご遺族、弁護団、支援者で交流し、今後の裁判などの取り組みに向けより団結をつくることと、支援の輪を広げることを目的に、11月23日、ウィシュマさん死亡事件裁判報告・交流集会を開催しました。当日は、会場、オンライン参加含め、160名の方が参加してくださいました。


集会のなかで、①弁護団からの報告、②ウィシュマさんの妹さん2人からの挨拶、③支援者からの挨拶がありました。この記事では①弁護団からの報告で、報告された内容をまとめたいと思います。




民事訴訟について

1.ビデオ開示についての現状について

今、裁判で提出を求めているウィシュマさんが収容されていた部屋の監視カメラの映像について、国側が「5時間分については保安上の措置をとったのちに提出します」というような回答があったと報告されました。


2.収容について

 ウィシュマさんを収容したことが違法であることと、日本の入管の収容制度そのものに問題があることについて、裁判で明らかにしていくことを弁護団で検討しています。

 1つは、今回のウィシュマさんの収容の件は、入管が定めた内部のルールに反しているということです。ウィシュマさんは名古屋入管に収容中に、DVを受けていた男性からスリランカに帰ったら「罰を与える」と書かれた手紙が届き、ウィシュマさんはスリランカには帰りたくない旨を訴えていました。ウィシュマさんが1回目に名古屋入管に提出した仮放免申請理由にも、DV被害者であることを書いていました。入管のルールとして、DV措置要領があり、DV被害者については、基本的に仮放免をして、手続きを進めることになっています。しかし、ウィシュマさんについては仮放免申請を不許可にされてしまいました。このことについて、入管側は、入管職員がルールを認識していなかった、と主張しています。また、2018年と2020年に、入管庁から、コロナウイルスの感染拡大を理由に、積極的に仮放免を運用するよう通達が出されていました。しかし、名古屋入管は、その通達に従わず、古いルールを適用してウィシュマさんの仮放免申請を不許可にしました。  

 入管内部で定められたルールすら守らず、被収容者の生命と健康を守る責務を果たさない。その背景には、入管制度における問題があります。日本の入管の原則収容主義は、国際的に見れば、恣意的拘禁にあたり、自由権規約に抵触するものです。既に自由権規約委員会から、日本における入管収容は批判されています。このように日本の入管制度が、国際社会の常識とかけ離れていることが問題としてあります。


3.医療について

①収容期間が5カ月になったころから、ウィシュマさんは目に見えて体調が悪化していたが、それまでに何の対応もされていなかった。

 ウィシュマさんは2021年1月の時点で、体重がかなり減っており、さらに、1月25日の尿検査の結果では、既に「ケトン体1+」が出ていました。すぐに対応しなければいけないような状態ではないが、医療観察が必要になる数値です。しかし、名古屋入管は継続して検査をしませんでした。1月28日には血が混じった嘔吐があり、単独室に移動させられています。2月3日ごろには車椅子状態で、支援者が名古屋入管に、外部病院で診察を受けさせるように申し入れをして、2月5日に消化器内科の受診をしました。胃カメラ検査の結果、体に異変はないと診断されましたが、このとき、ウィシュマさんを診察した医者は、薬が飲めないのであれば点滴、入院、と名古屋入管へ提出した報告書に書いています。しかし、名古屋入管は、ウィシュマさんが薬を吐いてしまうことを把握し、かつ本人から点滴や入院の要請があったにも関わらず、点滴、入院を認めませんでした。


②2月15日の尿検査の結果で飢餓状態を示す数値が出ていたが、何も対応していなかった。

「ケトン体3+」は飢餓状態を示す数値で、本来、血液検査を行わなければなりません。しかし、入管局内の医師は血液検査をしませんでした。なぜ検査を行わなかったのか?そのとき、尿検査を行った医師は、飢餓状態を示す数値が出た検査結果を見たか、覚えていないと証言しており、看護師については見たと言っています。その後、ウィシュマさんは体のしびれや幻聴を訴えるようになっていきました。


③3月4日〜6日の間、ウィシュマさんの状態は異様だったにも関わらず、対応しなかった。

 2月5日の胃カメラ検査で、体に異常はないと診断され、しかし、ウィシュマさんはしびれなどの自覚症状を訴えていました。その状況をみて、局内の医師は、精神科で診察するべきだと判断しました。これは、入管の、ウィシュマさんは仮病だろうという観方の影響を受けていると思われます。そして、亡くなる2日前の3月4日に精神科を受診させました。精神科を受診した結果、4日時点でのウィシュマさんの状態には、見合わないであろう薬と量が処方されてしまいます。処方された強い精神薬を飲んでから、ウィシュマさんは職員の呼びかけに反応しない、意識も朦朧とするような状態になりました。しかし、職員は、いい意味での薬の影響だろうと、異常な状態だとは思わなかったと入管は言っています。さらには、血圧測定が測定できない状態になっても、異常事態と思わず、放置した結果、3月6日にウィシュマさんは亡くなりました。


 以上3点の各フェーズでウィシュマさんを救えるタイミングはあったにも関わらず、対応しなかった、このことについて裁判で違法性を主張していこうと弁護団としては検討しています。

 しかし、違法性を主張するための情報や証拠として、ビデオがまだ開示されていません。入管庁が出した報告書はありますが、それが本当かどうかは、わかりません。ビデオ映像が残っている2月22日以降の状況については、ビデオが提出されてから、主張していくと報告されました。


刑事告訴と、検察審査会の状況について

 ウィシュマさんの妹さんと弁護士で、「殺人罪」として刑事告訴をしていましたが、2022年6月17日に不起訴処分が出されました。不起訴の理由について、担当検事は、弁護士やウィシュマさんの妹さんに対し、死因が分からないからだと、説明しました。

 妹さんと弁護士は、不起訴処分を不服として、8月8日に検察審査会に申し立てを行ています。検察審査会とは、市民から選ばれた11人が、起訴相当か、審査するものです。起訴相当と判断されれば、検察はもう一度、検討をし直さなければなりません。

 また、一度処分が出された関係で、弁護団と妹さんはウィシュマさんの司法解剖の鑑定書を見ることができました。しかし、検察は、見せることはするが、謄写は第3者に見せてはいけない、コピーをしてはいけないと言ってきました。結局、謄写は断念し、手書きで内容をうつしました。見せられた鑑定書は2つあり、1つは、ウィシュマさんが死亡した日の翌日である2021年3月7日の司法解剖が行われ、4月14日に出されたものです。この鑑定書は、確かに、死因は不明であると記載されていました。しかし、担当検事がもう一度鑑定を依頼していて、2022年2月28日に2つめの鑑定書が出ていました。そこには、1つは脱水と低栄養、そして、それに血球貪食症候群が合併し、多臓器不全を引き起こした、この2つが死因であるとちゃんと書いてありました。少なくとも、脱水と低栄養については、本人が点滴や入院を求めていたにもかかわらず、それを名古屋入管が認めなかった、その結果としてあります。つまり、殺人罪として十分起訴できたのです。

 報告した指宿弁護士は、「名古屋地検は身内である入管をかばっている。」「誰も、責任を問われていないんです。」「この事件だけじゃないです。今まで、入管で死亡したたくさんの事件について、誰も責任を問われていないんです。だから、繰り返されるんです。」と発言されていました。

 検察審査会は一般の市民が審査するので、検察審査会の11人に、みなさんの声を届けてほしい。数日以内に検察審査会に起訴相当を求めるネット署名を始めることや、取り組みにぜひ協力をしてもらいたいことが最後に呼びかけられました

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